こんにちは、元科捜研職員のflusです。
今回紹介するのは化学科です。
化学科と一口に言っても、覚せい剤や大麻から繊維片などの微物まで多くの種類の物質を取り扱っていて、それに伴い様々な装置を駆使しながら鑑定を行なっています。
この記事ではそんな化学科の業務内容について、扱う物質ごとに紹介していきます。
それではさっそく見ていきましょう。
化学科の業務
科捜研の化学科で扱っている物質を大まかに分類すると、以下のようになります。
- 薬物
- 毒物・劇物
- 油類
- 繊維片・塗膜 など
それぞれの項目に該当する物質を見ていきましょう。
薬物
覚せい剤・大麻・ヘロイン・コカイン・危険ドラッグなどの分析がこれにあたります。
これら薬物は、関連する法律(覚せい剤取締法・大麻取締法・薬事法など)によって所持や使用が規制されています。
まず、現場で疑わしいものが発見されたときは捜査員が検査キットなどを用いて禁止薬物なのかどうか検査しますが、その後科捜研でさらに詳細に分析することで、押収した薬物が法律で禁止されているものかどうかを科学的知見から判断します。
薬物の取り締まりや鑑定は、厚生労働省の麻薬取締部(通称マトリ)も行なっています。
毒物・劇物
青酸化合物・ヒ素化合物などの毒物や劇物、ダイオキシンなどの環境汚染物質の分析がこれにあたります。
これに関連する事件といえば、和歌山でカレーにヒ素が混入された事件が有名ですね。
油類
灯油やガソリンなどの分析がこれにあたります。
これに関連する鑑定としては、放火が疑われる火災現場で残焼物を採取した場合
- 残焼物から油類が検出されるかどうか
- 油類が検出された場合、種類は何か
などといったことを調べます。
繊維片・塗膜など
繊維片・ガラス片・金属片・プラスチック片といった微細な工業製品や塗膜などの鑑定がこれにあたります。
これに関連する業務として、例えばひき逃げ事件の捜査で
- 被害者に付着した塗膜を分析
- 現場に散乱したガラス片の屈折率の測定や成分分析
- プラスチック片や金属片に含有する微量な不純物の測定
などを行うことで、ひき逃げ車両の車種を推定することができます。
その他
他にも
- 火薬類
- シンナー
- ガス関係(一酸化炭素・塩素など)
などの物質や血中アルコール濃度の測定なども行います。
上記した物質の分析に際し、科捜研では以下に挙げるような様々な装置や手法を用いて鑑定を行なっています。
- GC-MS
- FT-IR
- ラマン分光
- X線回折装置
- 電子顕微鏡 など
化学科の採用について
科捜研の化学科は大規模県になると、いくつかの科(係)に分かれて業務を分担しているケースがよくあります。
採用試験に応募する際は、募集要項や業務内容をしっかり確認して
- 自分が受ける県は科(係)が分かれているのか
- 分かれている場合、どういった物質を扱う科に配属される予定なのか
を把握しておきましょう。
私が科捜研に勤めていた頃、化学科の友人から聞いた話ですが
「科捜研に入ってからは、大学時代よりも多くの物質や装置を扱うので覚えるのが大変だが、様々な分析手法が学べるので力が付く」
と言っていました。
警察官から依頼された様々な種類の物に対し、どのような分析手法を用いれば良いか日々試行錯誤しながら鑑定するのが化学科というイメージで良いと思います。
いかがでしたか?
科捜研の化学科について少しでも理解を深めていただけたのであれば幸いです。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
化学科以外の業務内容については以下の記事をどうぞ!
科捜研職員の出身大学・各科の職員の出身学部について知りたい方は、以下の記事をどうぞ!