こんにちは、元科捜研職員のflusです。
科捜研はドラマで見たことあるけど、実際の仕事内容はどんな感じなの?と思っている人は多いのではないでしょうか。
そこで今回から複数回にわたって、科捜研にある各科の業務内容について紹介していきます。
第一弾は法医科!
ドラマ科捜研の女は京都府警科捜研の法医科、トレース・科捜研の男は警視庁科捜研の法医科ということで、みなさんにとって一番馴染みが深い科なのではないでしょうか。
そんな法医科の仕事内容について、科捜研に勤務していた筆者が解説します。
それでは見ていきましょう。
法医科の業務内容
DNA型鑑定
法医科のメインの業務はDNA型鑑定です。
DNA型鑑定とは、DNA(デオキシリボ核酸)を構成する塩基配列(高校生物で習うATGC)が個人によって異なることを利用し、人由来の試料の塩基配列を調べることで個人を識別する手法です。
DNA型鑑定のプロセスは以下のようになります。
- 試料持込
- DNAの抽出
- DNAの増幅
- DNA型の識別
まず、捜査員が犯罪現場で試料(唾液や毛髪などの人体組織)を採取し、それが科捜研に送られてきます。
その後、専用の機器でDNAを抽出、PCR増幅した後、フラグメントアナライザを用いてDNA型を識別します。
得られたDNA型(犯罪現場にあったもの)と被疑者のDNAが合致すれば、被疑者が犯罪に関与したことが証明でき、その他の証拠などと合わせることで無事犯人逮捕に至ります。
また、現場での試料採取は主に鑑識担当の警察官が行いますが、法医科の職員が現場に出向くこともあります。
DNA型鑑定による個人識別精度は非常に高く(565京人に1人の識別精度)、現代の警察の捜査においてDNA型鑑定の結果は重要な証拠になっています。
こうした状況から、法医科の年間鑑定数はとても多く、科捜研の他の科に比べて忙しいと言えるでしょう。
全国にいる科捜研職員のなかでも3〜4割ほどが法医科に所属していて、科学捜査の中でもDNA型鑑定が重要視されていることがわかります。
顔貌鑑定
鑑定数は少ないですが顔貌鑑定も一部行っています。
顔貌鑑定とは、防犯カメラ等に写り込んだ犯人の顔画像と被疑者の顔画像を比較し、両者が同一人物かどうかを調べる鑑定です。
防犯カメラに写り込んだ犯人の顔画像は、必ずしも真正面を向いている訳ではありません。
そのような場合でも、3次元顔画像識別システムを用いて被疑者の顔画像を3次元的(立体的)に取り込むことで、あらゆる方向を向いた犯人の顔画像に対応することができるようになります。
必要な資格
科捜研職員がDNA型鑑定に従事できるようになるには、科警研で研修を受講し、認定を受けなければなりません。
しかし研修を受けるまでに3年間の実務経験を要するので、入所後しばらくは下積み生活となります。
ちなみに法医科に行くには医師免許が必要と思う方も多いと思いますが、科捜研の法医科に応募する上で医師免許は必要ありません。
死体を解剖して死因を特定するいわゆる法医学者(医師免許を持つ医者)になる場合には医師免許が必要になります。
法医学者と科捜研の法医の業務は互いに異なったものであり組織としても全く別物です。
法医科の採用
法医科は毎年多くの都道府県で募集がかかり、採用者数も他の科と比較して多いのですが、応募者数も多いため高倍率になること間違いなしと言えるでしょう。
私が所属していた県の過去の法医科の採用試験では、募集人数1人に対し150人の応募があった年がありました。
私が科捜研にいた数年前の段階で倍率は落ち着いてきていましたが、今でも難易度は高いと言えるでしょう。
いかがでしたか?
法医科の業務について多少理解が深まりましたでしょうか。他の科についても順次紹介していきます。
物理科と文書・心理科の仕事内容についてはこちらをご覧ください。