こんにちは、元科捜研職員のflusです。
今回は、元科捜研職員がテレビ朝日系人気ドラマ『科捜研の女』を観た感想や現実と異なる点などをまとめました。
科捜研の女というドラマがあることはもちろん知ってはいましたが、一つの話を最初から最後まで通しで観たことがなかったので、しっかり観るのは今回が初めてです(科捜研の女を観たことがない科捜研職員は意外と多い)。
さて私が今回観たのは、科捜研の女season19の第28話(2020年1月30日放送分)です。
あらすじ
※以下ネタバレ含みます
今回の話のあらすじをざっくり説明すると、ある日ジム通いの女性が自宅マンション内で遺体の状態で発見されます。科捜研職員は現場に臨場・試料採取し、それぞれの科で鑑定したりSNSの解析をしたところ有益な結果が得られます。そしてこの結果を元にさらなる聞き込み捜査などを経て無事犯人逮捕に至るという展開です。
詳しいあらすじは以下をご覧ください。
テレビ局のアナウンサー・七海真友(野呂佳代)が自室で殺害され、榊マリコ(沢口靖子)ら科捜研メンバーが臨場する。
“痩せられない女”こと七海はバラエティー番組のダイエット企画に挑戦中で、腕には消費カロリーなどを計測するスポーツウォッチも装着していたが、何故か死亡直前に大量の出前を発注しており、部屋にはピザ、寿司、中華などの配達員が押し寄せていた…。さらに、現場からはプロテインの成分も検出されていた…。これは犯人が残したものなのか?
七海を指導していたのは、厳しさが売りのジム『Queen-body』で、“絶対に痩せさせる女”の異名を持つトレーナー・二宮美音(青山倫子)。美音は、七海と口論する様子も目撃されており、疑惑の目が向けられることに。
しかも七海は『Queen-body』とライバル関係にあり、「無理せず、ゆったり」をモットーにしたジム『からだゆーとぴあ』にも通っていたことが判明!
なぜ被害者はジムを掛け持ちしていたのか。マリコと土門薫(内藤剛志)は、『からだゆーとぴあ』のトレーナー・辻井弘明(賀集利樹)からも話を聞くことに。
やがて美音のとんでもない疑惑が発覚!? そこでマリコが行う鑑定とは?
さらにスポーツウォッチのデータに関する疑問も浮上し、橋口呂太(渡部秀)、涌田亜美(山本ひかる)、蒲原勇樹(石井一彰)が体を張った実証実験に挑む!
被害者が生前、SNSに『嘘つきは嫌い』という言葉を残していたことも判明するが、その意味とはいったい?
マリコの鑑定が驚きの真相をあぶり出す!!
科捜研の女公式サイト: https://drama-circle.com/kasouken19-spoiler/
ドラマと現実の異なる点
ドラマを観てみると、実際とは異なる点がいくつもありました。それらを抜粋して紹介していきます。
事件現場のシーン
まず科捜研の法医科職員が現場に臨場するのは良いとして、それ以外の科の人もみんな揃って現場に行くのには驚きです。科捜研では各科それぞれ抱えている鑑定があるので、各人がそれぞれの業務を中断して全員で現場臨場するようなことはありません。
そして科捜研の研究員みんなで遺体がある部屋にズカズカ入るのもアウトですね。職員の髪の毛や唾液などが現場に落ちたり、被疑者のものと混ざってしまうことで鑑定に影響が出てしまう可能性があります。
各研究員の鑑定のシーン
今回の話でそれぞれの科の研究員がやっていた鑑定をまとめると以下のようになりました。
- 物理 成傷器鑑定
- 化学 液体の成分分析
- 文書 靴の付着物鑑定
- データ SNSの画像解析
- 法医 スポーツウォッチの付着物鑑定・人の耳同士を比較し同一人物かどうか鑑定
まず、物理の成傷器鑑定。
これは初めて聞きました。被害者の頭にできた傷の形から犯行時に使った鈍器の種類を判別するのでしょうか。
科捜研の物理科でこのような鑑定をやっている都道府県はないと思います。
次に、文書担当の研究員の靴の付着物鑑定。
文書鑑定科の研究員(しかも所長)があえてこれをやる理由はないので、化学科や鑑識課の人に任せて、自身は専門知識を活かせる筆跡鑑定や偽造通貨鑑定などに取り組むべきでしょう。
SNSのデータ解析なんかも基本的に捜査員(警察官)がやります。
その中で解析(鮮明化や物同士の照合など)が必要な画像などがあれば科捜研に鑑定依頼がきます。
そしてSNSの解析をするよりも、まず現場マンションやその周辺の防犯カメラの解析をするべきだと思いました。
今回のドラマの鍵は、『人の耳同士を比較し同一人物かどうか鑑定』したことだと思います。ドラマではこの鑑定によって、A4サイズ大のポスターに載っている2人の人物の片耳同士を比較し、「2人の人物が別人である」との鑑定結果を出します。
A4サイズのポスターに載っている人物の、しかも耳の画像となると相当解像度が低い(画像が粗い)と考えられるし、片耳以外の比較材料がない状況では鑑定結果を出すのはほぼ不可能です。
しかしドラマでは少しの困難もなく約3秒で鑑定結果を出すことができていました。一体どんな最先端技術を使っているのでしょうか。
この後、マリコさんが捜査員とともに聞き込み捜査などをしながら被疑者を特定していくのですが、実際の科捜研職員は聞き込み捜査などをする機会はありません。表立って事件の解決を主導することはなく、捜査員からの鑑定依頼に基づいてひたすら鑑定をこなしていく、いわば裏方の仕事です。
ところで京都府警科捜研は各科一人ずつしか研究員がいないのでしょうか。あの少人数で京都府全体の鑑定をカバーできているのかとても心配です。人事担当者の方どうか増員してあげてください…。
気になる点は多々あるけれど
他にも気になる点を挙げ出したら切りがないのですが…
個性溢れる科捜研メンバーが四苦八苦しつつ、要所要所でそれぞれの専門性を発揮しながら事件解決へ導いていく。ツッコミどころ満載だけれども、とても楽しいドラマでした。
もっと早く観ておけばよかったと少し後悔しています。
おわりに
『科捜研の女』に憧れて多くの人が科捜研を目指すのは良いことだと思います。しかし入る前にしっかり下調べしないと、ドラマとの間の(非常に大きな)ギャップに苦しむことになるかもしれません。そのようなギャップを埋めるために、ぜひ当サイトを有効活用していただけたらと思っています。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
>ところで京都府警科捜研は各科一人ずつしか研究員がいないのでしょうか。
少なくとも科捜研の女のシーズン1と2では一応メイン俳優以外の人がちょろっと写っていた場面があったのでそうではないとおもいますけど、出演料などの観点から途中から無くしたのだと思います。
そこら辺はドラマの製作費削減などでそうなったのだと思われます。